何処からか甘い香りがただよってきます。見上げると薄紫のきれいな花が咲いています。桐の花もここ今津に来てから知った花です。この季節、山のあちこちに見かけます。
けれど、この花の香りがこんなに良い香りだとは、最近まで気が付きませんでした。
石井桃子さんの著書『幼ものがたり』に書かれていた桐の花が咲き出すと、甘い匂いに包まれること、花は少し古くなると、ぽろぽろ地面に落ちてきて、その花に糸を通して遊んだこと
などを読んで、それで気が付いたのです。この季節になると、何処からともなく漂ってくる甘い香りと、桐の花がやっと結びつきました。私も、落ちている花を持ち帰って玄関に置き、家の中でもほんのりやさしい香りを楽しみました。
昔、いなかでは、女の子が生まれると、その子の嫁入りのときの箪笥の材料のするため、桐の苗を植えたそうです。このあたりの桐の木も、その名残でしょうか。もう、箪笥の材料になる事は無いかもしれませんが、天に向かって咲くきれい紫の花と、甘い香りで今も私たちを楽しませてくれています。