京都はのんびりした古風なところがあるけれども、どこか殺伐とした血の匂いのようなものを感じる事がある。
Yutaが図書館から借りて読んでいた森見登美彦「太陽の塔」を読んでみたら、次々と借りて読む羽目になってしまった。
森見登美彦の小説は、そのような京都の特質を生かしたエンタテイメントになっている。京都を書割にして芝居を見ているという趣だ。脚本を変えたそれぞれの公演を見るような「四畳半」はいうにおよばず、どの小説でも章ごとに舞台転換が行われ、店の名、人物、描写が使い回しされ、芝居の中に読者を引き込んでゆく。芝居とは究極のマンネリズムなのだから。
森見の小説は、夜が更けるに従い気持ちが冴え高揚してきて不可能なものは何もないという妄想と、どこにも根拠をおく事も出来ず、とてつもない不安の中で目覚める朝の気分を同時に描いたご都合主義きわまる代物だ。
登場人物が、同じ京都を舞台にした、西尾維新の「戯言遣いシリーズ」とダブってみえるのも、妖しげな京都の夜風のなせる偶然だろうか。
とにかく小説は読んで楽しめればいい。面白きことは良きことなり。それも阿呆の血のしからしむところなり。
参考文献
- 森見登美彦「太陽の塔」他
- 西尾維新「クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い」他
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キー・ワード
有頂天家族 四畳半神話大系 夜は短し歩けよ乙女