工房ブログ

『エレクトラ 中上健次の生涯』を読んで

  • 投稿者:Sigeru
  • 2008年5月9日(金)16時41分

マキノ図書館に高山文彦の『エレクトラ』が入っていた。借りて読む。副題は、「中上健次の生涯」。

エレクトラ

小説家としての資質を背負って生まれた男が、小説家になろうと足掻き、もがき、その優れた資質のゆえに何度も何度も原稿を没にされ、ついに「岬」を書き、「枯木灘」に到る。

書きたいものがある。書きたいものがあることははっきりしている。だけど言葉が届かない。容易に届くなどとは思っていない。

それを信じ待っているものがある。

待ち続け支えた者のある中、ぎりぎりのところで秋幸の物語が生まれてきた。生まれるべくして生まれてきたその根のところから、丁寧に描かれてゆく。

人間が生きていくという事は何なのか。人間の尊厳。人間存在の重さ。

人間は自然の一部であり、さらに大きなものの一部でしかないかもしれない。しかしそれでもなお、人間は自然の一部ではないし、自然とは違う何か特別なものとしてあるという存在のありようから逃れる事が出来ない。

出自だけでなく、中上健次という人間のすべてをさらけ出し書く、というその一点に問いのすべてをかけていく。
中上健次がどういう人間かではなく,中上健次は何をさらけ出し、何を問い書こうとしたのかを書いた本であろう。さらけ出さねば書けなかったものが何か。

「岬」で一歩が開かれた。未曾有の一歩が開かれた。この本はそこへ到る物語だ。そして、「枯木灘」、「紀州 木の国・根の国物語」に言及する事で中上健次が小説家として書くという一点での苦闘、それこそすべてをさらけだしてなお足りない日々が暗示されている。

母系と父系….なぜ「エレクトラ」でなく「岬」なのか?表題にもなったテーマのほかに、語りと文字、文字によって書くという事….「紀州 木の国・根の国物語」での経験、「春日」ー「熊野大学」への思い入れ、等、興味深い記述も見られる。

岬

早すぎた死は、中上健次にとっての無念であり(まだまだ書きたい事があった。)、今なお私たちの無念でもある。

酷な言い方かもしれないが、残された数編の未完小説は無残ですらある。それは書かれたに違いない秋幸の物語への予感の大きさであろう。

中上健次の仕事は、人間存在の大きさに見合ったものだった。今、改めてそう感じる。

「僕はいま、それゆえに僕のなかにおこったすべてを実作者、現場者として引き受けなければいけないと思っている。」その事を小説家として書く事の一点に生きぬいた人間の物語を記憶に留め置くために書かれた本だ。

付け加えれば、編集者や同級生、ジャズビレッジの仲間、山口かすみとのやり取りの描写に、風評とは別に中上健次はこういう人ではないだろうかとの想像と重なるところに頷け、この本の作者は作家中上健次を、私と同じような受け入れ方をしているんだな、とうれしかった。

中上健次がもっと読まれてほしい。

「化粧」、「水の女」、「千年の愉楽」などの短編集の独特の語り口も魅力的だ。「日輪の翼」、「奇蹟」の中長編。

「地の果て 至上の時」は秋幸をひとたび不明にしてしまうための物語。

やはり、「岬」を、そして「枯木灘」をまず読んでほしい。


「第2回 酒器と湯呑展』 於 伊勢丹府中店

  • 投稿者:Sigeru
  • 2008年5月8日(木)15時19分

5月12日から伊勢丹府中店で開かれる『酒器と湯呑展』に出展する器の一部です。

赤絵ぐいのみ
注器とぐいのみ

風花の注器とぐいのみ

ぐいのみ湯呑

酒器とぐいのみ

滋の酒器とぐいのみ

ぐいのみ酒器

父の日対応として昨年好評だった酒器と湯呑展が,今年も伊勢丹府中店で開かれます。普段使いに出来る、質が高くてお値打ちな作家ものの作品を一堂に集めた展覧会です。

「第2回 酒器と湯呑展」
  • 会場 伊勢丹府中店 4階
  • 会期 平成20年5月12日(月)ー6月15日(日)
  • 時間 午前10時ー午後7時30分(最終日は午後4時まで)

 

Café Cozy 手づくり市マキノ『くらふとまーけっと』Ceramic fair in 陶芸の森報告とお礼

  • 投稿者:Sigeru
  • 2008年5月7日(水)0時32分

2013 年の信楽作家市(信楽 Ceramic Fair から改称)については、こちらを御覧ください。

Café Cozy 手づくり市
Cafe Cozy

4月26,27日に工房のある今津町の喫茶店Cafe Cozyの駐車場を中心に、毎年春と秋に開かれます。今回は、2日間出展はしたのですが、所用があり店に出たのは27日1日だけでした。26日に尋ねて来ていただいた方、ごめんなさい。

滋風の店出展風景
マキノ『くらふとまーけっと』
マキノ『くらふとまーけっと』

春の穏やかな日差しにメタセコイヤの並木が気持ちよかったです。

高島市を中心に、大津の方からも多くの工房の参加があり色々な店を覗いて見れ楽しかったです。木工関係の工房の多いのが特色です。市内を中心に来ていただいた皆さんありがとうございました。今後、県内、京阪神からも多く着ていただければ・・・・

出展風景出展風景
Ceramic fair in 陶芸の森
Ceramic fair in 陶芸の森
出展風景

「やけもの市」、信楽陶器市が統合され陶芸の森で開かれるようになってからは(といってもまだ2回目だが)、今年初めて参加。やけもの市以来のお客さんが、案内状片手に幾人も尋ねてこられ、嬉しかったです。(3日目は滋は所用で店に出られず、尋ねてこられた方にお会いできなかったのが心残りです)

今回新たに出会う事の出来た方ともども、末永くお付き合いできるよう、無難な方へ流れることなく、より独特な作品や器を生んでゆこうと思っています。

滋風の店滋風の店

2nd「信楽 Ceramic fair in 陶芸の森」始まる!

  • 投稿者:Sigeru
  • 2008年5月3日(土)23時05分

2013 年の信楽作家市(信楽 Ceramic Fair から改称)については、こちらを御覧ください。

昨日(2008年5月2日)信楽で、「2nd 信楽 Ceramic Fair in 陶芸の森」[別窓]が始まり、わが「滋風」も2日朝4時前に今津を出、出店準備に向かった。2日は曇り気味で風の吹く信楽高原は肌寒いほど、3日は打って変わって汗ばむ陽気。

今回「滋風」は、「正祥窯」さんと共同でテントを借りて出品しています。(会場で渡される Fair案内図では、「正祥窯」を目当てに尋ねてください。)

私ども、信楽で独立したつくり手にとって「やけもの市」の流れを持つこのFairは、お客さんとじかに触れ、いつも原点に戻ってみる機会を得られる特別な場です。

詳しくは、後日掲載しますが、まず1報を。

2日当日の「滋風」の店の様子は、「正祥窯」[別窓]のサイトで写真を載せていただきました。このサイトのバックナンバーでは、今回のFairにも出展しておられる信楽在住のベテラン作家が4,5人、紹介されています。ぜひご覧ください。

信楽への道路は、この2日間渋滞する事もなくスムーズに行ってます。残りの休日(Fairは5日まで)ねらい目です!